穀雨は、春のフィナーレ
桜が散り、若葉が芽吹き始めたと思ったら、ふと吹きつける風がどこか冷たい……。
春がもうすぐ終わろうとしているのに、今年はまだファンヒーターが片づけられずにいる方も多いかもしれません。(実はウチも^^;)
そんな“名残りの春”を告げる節気が、穀雨(こくう)です。
穀雨は、二十四節気の第6番目。
2025年は4月20日頃から始まります。
この時期は春の終盤でありながら、自然界のエネルギーがぐっと高まる時。
次に訪れる「立夏(5月5日頃)」へとつながっていく、まさに季節の“橋渡し”のような期間です。

「穀雨」という名前の意味
「穀雨」という言葉には、美しい意味が込められています。
「穀」は、米や麦などの穀物のこと。
「雨」は、その穀物たちを育てる恵みの雨のこと。
つまり穀雨とは、「穀物に恵みをもたらす春の雨」という意味なのです。
この時期に降るしとしととした雨は、田畑をしっかりと潤し、農作物がすくすくと育つ準備を整えてくれます。
まさに自然のタイミングと人間の営みがぴったり重なり合う、豊かでありがたい季節です。
穀雨の頃の自然の変化
春のはじまりにはまだ裸のようだった木々も、穀雨の頃にはすっかり新緑をまとっています。
街路樹や山々がやわらかな緑に包まれ、歩いているだけで気持ちがふわっと軽くなりますね。
- 穏やかに降る春の雨
- 山菜やタケノコなど春野菜の旬
- 茶畑では新芽が伸び、一番茶の摘み取りが始まる
- 蚕が繭を作り始める
- 鳥のさえずりがいっそうにぎやかになる
今年のように少し寒さの戻る年は、雨が冷たく感じることもありますが、それでも確実に自然は夏へ向けて歩みを進めています。
八十八夜と新茶の恵み
穀雨の時期には、「八十八夜(はちじゅうはちや)」という特別な日が含まれます。
これは立春から数えて88日目。2025年は5月1日です。
この日に摘んだ新茶は「無病息災」をもたらすと言われ、古くから縁起物とされてきました。
一番茶のやわらかい新芽は、香りも味も格別で、季節のごちそうそのもの。
お湯を注いだ瞬間に立ちのぼる、あのふくよかな香り。
ひとくち飲むだけで、ふうっと肩の力が抜けるような、そんな癒しの力があるのが春の新茶です。
今年は特に、あたたかい湯呑みに手を添えながら「春を味わう」時間をゆっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。
穀雨の頃の暮らしと風習
この頃、農家では田植えの準備が本格化します。
稲の種まきや苗作り、畑の整備など、穀物の成長に欠かせない作業が次々と行われます。
都会で暮らしていると忘れがちですが、日本の食卓を支える米や野菜たちの「出発点」は、まさにこの穀雨の時期なのです。
また、春の味覚もいよいよ充実してきます。
タケノコ、ふき、ウド、山菜など、ちょっと苦みのある旬の食材は、体の中にたまった冬の重さを流してくれるような感覚があります。
こうした季節の恵みは、心と体を自然のリズムに戻してくれる大切なサインかもしれませんね。
俳句に詠まれる穀雨の情景
風眠り 穀雨の音か 夕早し
── 小倉緑村
春の終わり、風も吹かず、穏やかな雨が静かに降っている。その雨音だけが静かに響き、しんとした空気の中で、なんだか夕方が来るのが早いように感じる……。
穀雨の持つ「静かな祝福」のような空気感が伝わってきます。
にぎやかな桜の季節とはまた違った、しっとりとした美しさを届けてくれるのが、春の終わりに訪れるこの雨なのです。

穀雨をもっと楽しむために
- お気に入りの傘でお散歩してみる。春の雨は冷たすぎず、心が落ち着く時間。あえて濡れてみるのも一興……(濡れるのはどうかと思いますが、私の傘はムーミンです)
- 春野菜を使った料理を味わう。タケノコご飯や山菜の天ぷら、新茶で炊いたごはんなど、今だけの味覚を楽しんで。(タケノコご飯は大好物です^^)
- ベランダや庭に緑を取り入れる。雨が多い時期だからこそ、植物たちもすくすく育ちます。小さな鉢でもOK。(雑草も生えてきます^^;)
- 田園風景を眺めに行く。車で少し郊外へ出かけて、新緑の山々や田んぼを見に行くのもリフレッシュに。(ウチは、車を使わなくとも見えます)
まとめ:穀雨は、実りのスタートを告げる雨
穀雨(こくう)は、単なる“春の終わりの雨”ではありません。
自然と人の営みがつながり、これからの実りを育む大切な節気です。
自然の恵みに感謝しながら、少しずつ気持ちも“初夏”へと切り替えていくこの時期。
たとえ寒の戻りがあっても、季節はたしかに前に進んでいます。
心がなんとなく落ち着かない時は、窓の外の雨音に耳を傾けてみてください。
きっとそこに、小さな春のメッセージが隠れているはずです。